ある女性の恋
どうも、アサイです。
今日は、ある女性のお話をしようと思います。
色々な捉え方があると思うので、正解はありません。
皆さんに何かを感じてもらえればそれでいい。
彼女は20歳で結婚した。
彼女の家は、地元でも有名な大きな家。
彼女の家の前を車で走っても、しばらく塀が続く。
門を入っても車で少し走るくらい大きな家。
その家の3姉妹の次女で、底抜けに明るくて、ちょっと抜けていたり。
周りの人を笑顔にするそんな魅力的な女性。
彼女のご両親は海外からホームステイを受け入れるちょっと進んだご両親。
一緒に出かけたりする時に迎えに行くと、何人もの国際色豊かな顔ぶれが家の玄関まで出てくる。
彼女自身も英語は話せていて、将来は英語を活かせる仕事に就きたいと目を輝かせてよく話をしていた。
その彼女が20歳になる少し前に妊娠した。
19歳になった頃からお付き合いをしていた男性。
彼女は嬉しそうにお腹をさすりながら、喜んでいた。
仕事はまたいつかやればいい。大好きな人とその人との子供ができたことを今は嬉しいと思うし、大切にしたいと。
そんな彼女をご両親はもちろん、周りの友達もみんな喜んだ。
お腹が大きくなる前に親しい人と親族だけを集めて教会で結婚式をした。
「みんなありがとう。私も彼もまだまだ未熟だけど、3人で頑張って行くから見守ってね」とすごくいい式だった。二人とお腹の子がいることもあり、ささやかだけどみんなが笑っている彼女らしい結婚式になった。
彼女が幸せになること。彼女の子供が元気に生まれてくることをみんな願っていた。
予定日よりちょっと早く未熟児だけど、元気な男の子を出産した。
彼女に似て目がクリクリのかわいい男の子。
本当に彼女は幸せそうだったな。
男の子のお披露目会やったり、出産後も彼女の周りにはいつも友達がたくさんいた。
子育ては意外と大雑把。溺愛していたけど男の子だから細かいこと気にするよりも、心が大きい男に育って欲しいと彼女なりの思いがあったらしい。
実家に頼ることもせず、旦那さんの給料だけで3人で暮らしていた。
変化が起きたのは、子供が1歳になる頃から。
彼女からあまり連絡が来なくなった。
みんな子育てで忙しくて時間がないのかな?って話をしててあまり気にはしていなかった。
たまたま出かけた先で買い物をしている彼女を見かけた。
「ユリ・・・??」
声をかけようとしたけど、彼女の姿を見て声をかけられなかった。
子供が元気に育っているようだったけど、彼女は見るからにやつれていて、顔はアザだらけだし、足も少し引きずっていた。
夫婦のことは夫婦にしかわからない。
そう思って何も言わずにいたけど、やっぱり気になってどうしようもなく、彼女に何回か連絡をした。
「最近連絡ないけど、忙しいの??」
「うん、歩くようになると目が離せなくてね。」
「そっか、ならいいけど何か困ったことがあったら何でも言えよ」
「わかった!ありがとう!でも、私は大丈夫だから!またみんなで会おうね!」
「うん、そうだな」
あの時見たのは俺の間違いだったのかと思うくらいすごく元気に話ができた。
彼女が入院したと聞き、急いで病院に行った。
そこには、顔半分が倍以上に膨れあがって腕にも切り傷がいくつもある彼女が意識ない状態で横たわっていた。
彼女のお母さんに何があったのかを聞いた。
「すみません。出すぎた真似をするつもりは無いんですが、ユリさんに何があったんですか??」
「みんなに言わないでって言われてたけど・・・」
「実はね、あの子の旦那が子供生まれたあたりから、イライラするとユリに暴力を振るっていたらしいの。」
「あの子はみんなに祝福してもらったし、こんなこと言えないよ。」って。
「私もこんなになるまで我慢していたのに気づかなくて・・・」
泣き崩れているお母さんを見ながら、自分も何もしていなかったことに情けなくて涙が出た。
やっぱりあの時見たことは間違いじゃなかったんだ。
3週間後、彼女は退院した。
もちろん、誰一人として彼女を旦那の元に返すことは反対した。
彼女の意地だったのかもしれない。
旦那との息子をちゃんと育てる為に何とか旦那に変わってもらおうと。
それから2年、彼女は頑張った。でももう限界だった。
最低な旦那だが、いざ離婚となるとなかなか応じようとはしなかった。
結局、旦那は変わらず、彼女の両親と旦那の両親のいる場で彼女がどういう状態か見てもらい、旦那の両親からその場で離婚届けにサインするように話し合いがあった。
やっとの思いで彼女は離婚出来た。
でも彼女は実家には戻らなかった。
「何で実家に戻らないの?」とみんなが聞いた。
「自分で結婚すると決めたし、自分で子供を産むことも決めた。親に頼れば楽かもしれない。でもそれは私が育てたと息子に胸張って言えなくなるから。」
彼女らしい。
周りの説得の甲斐なく、彼女は一人でアパートを借りて保育園に息子を預けて働き出した。
しばらくして会った時に
「なんかさ、意地でやってるけどさ。やっぱり子供一人育てるって大変だね。でも今は暴力を誰かに振られることもないし、やんちゃなチビと二人、何とか出来てるから」
前とはちょっと違うけど、また彼女らしさが出てきて何だか嬉しくなった。
「すげーな。ホントよくやってるな。」
「母は強いからねー」
「だな(笑)」
「ね、いつも気にかけてくれてありがとうね。」
「何だよ、急に」
「本当に感謝してるんだ、辛い時とかすごいみっともない姿とか見せたのに変わらず接してくれて本当に嬉しかった」
「大したことしてないよ」
「何にも言わないでさ、居てくれるだけですごく安心できるんだよ」
「ま、俺くらいになるとな(笑)」
「ね、こんなこと言っていいかわからないけどさ、、、」
「ん??どうした?」
「私と付き合ってくれない?」
「あー今の無しな。」
「え??やっぱりダメかー」
「違うよ、そういうのは俺から言うんだよ、だから今のは無し」
「全部守るなんて言わない。だけどこれ以上に無いってくらい大切にするから。あとユリだけじゃなく、息子もな。」
「ありがとう。こんな女と付き合おうと思うなんてバカだねー」
「そうだな(笑)」
今でも、4月になると彼女のことは思い出します。
その後、何年かは彼女に会いにも行きました。
会うって言っても彼女の実家に行って、線香をあげるだけどね。
俺と付き合って3ヵ月後に風邪をこじらせて嘘みたいに手の届かない遠くに行ってしまいました。
彼女のお母さんから、「もうあなたはまだ若いんだから、他を見なさいと。」
「うちの孫はしっかり育てるから」と。その孫ももう成人した。
彼女の実家には行かなくなったけど、彼女が付き合っていた時に何度も言ってたことを覚えている。
「あんたはさ、女性を幸せにする力あるよ!だからさ、ヤキモチ焼かないようにするから周りで困っている女性いたら手を貸してあげてね!」
彼女が言ってたからとかじゃなくて、気がついてみれば女性を輝かせる為に「いい男を作る」ことを仕事にしてた。
※ノンフィクションです。